カンヌ国際映画祭にて最高賞のパルム・ドールを受賞した映画『万引き家族』が、いよいよ今週の土曜である7月20日に地上波初放送です。
今回はそれに先駆け、全体のあらすじをまとめました。
※大部分がネタバレのため、まっさらな気分で視聴したい方は避けてください。
万引き家族のネタバレあらすじ
東京の下町に住んでいる5人家族の柴田家。
父の治(リリー・フランキー)、母の信代(安藤サクラ)、息子である祥太(城桧史)と、信代の妹の亜紀(松岡茉優)。そして、祖母の初枝(樹木希林)。
彼らは、『万引き』で生計を立てて暮らしていました。
ある冬の夜、治と祥太はいつものようにスーパーで万引きを行い、帰路に就く途中の団地で、小さな女の子を見かけます。
寒そうに震えている彼女を不憫に思った治は、その子を家へと招き入れます。
ゆりとの出会い
『ゆり』と名乗る少女(佐々木みゆ)の身体には、日常的に虐待を受けている痕が生々しく残っていました。
しかし、信代と治はそれでも1度はゆりを両親の元へ返そうとします。
ところが、ゆりの家を覗いてみると、酷い夫婦喧嘩が繰り広げられていました。結局、治はゆりを引き取ることに決めます。
柴田家は非常に貧困な生活を送っていました。収入は初枝の年金、信代のクリーニング工場でのパート代、治の日雇い建設業の給料。そして、風俗店で働いている亜紀でギリギリ賄っていました。
ところが、治は事故で脚を骨折。労災も降りず収入が失われます。
新たな名前をもらうゆり
ついに、ゆりが行方不明になった事実が、テレビで報道されてしまいます。柴田家は慌ててゆりの髪型を変え、『りん』という偽名を与えました。
万引きを通じて次第に仲良くなっていく祥太と凛ですが、相変わらず家庭は逼迫したままです。
悪いことは続くもので、不況の煽りで信代もクリーニング店を解雇されてしまいます。
祥太は駄菓子屋でりんにも万引きをさせたのですが、駄菓子屋の店主にお菓子を与えられて、「妹にはさせるな」と忠告されます。この辺りから、祥太は万引きに疑問を抱くようになります。
初枝の死
初枝は家族には内緒で亜紀の両親と会い、お金をもらっていました。亜紀の両親は彼女が海外留学していると信じており、実際の惨状は知りません。
季節は夏。一家は海水浴に出かけてつかの間の安息を楽しみます(水着は当然盗品)。
しかし、海水浴の翌日、初枝は息を引き取ります。葬式代がとても払えないことと、年金を不正に受け取りたいために、治と信代は初枝を自宅に埋め、存在を抹消しました。
初枝のへそくりを発見してはしゃく治と信代を、祥太は無言で見つめています。祥太はこれまで万引きは当然のことだと教えられてきましたが、駄菓子屋の件もあり、徐々に考え方に疑問を抱くようになってきたのです。
万引き家族の解散
駄菓子屋は店長の死により閉店してしまったため、祥太はりんとスーパーへ向かいます。
そこで、りんは初めて自発的に万引きを行おうとしたため、祥太は自らが囮となって店員を攪乱したのですが、その際にガードレールから飛びだしてしまい、けがをして病院送りになってしまいます。
治はすべてがバレてしまう前に、祥太を見捨てて残された信代たちと夜逃げしようと家へ向かうのですが、先回りしていた警察官に逮捕されてしまいます。
そこで、真実が明らかになりました。柴田家は全員に血の繋がりがない、疑似家族だったのです。
柴田家の真実
治はホステスである信代の常連客だったのですが、DV被害に耐えかねていた信代と共謀して、前夫を殺害していたのです。
その際の罪を、治は一人で肩代わりしていました。
初枝はそんな過去を知り、同居人として迎え入れてくれたのです。
そして祥太は、2人の息子ではなく、車上荒らしをしていたパチンコ屋で車内に放置されて死にかけていた赤ん坊だったことが明かされます。
残酷なことに、りんは元の家族の元へと引き戻されてしまいます。
余談ですが、治と信代というのは偽名であり、漢字は不明ですが本名はそれぞれ「えのきしょうた」と「たなべゆうこ」であることが警察の会話で判明しています。
結末とラスト!その後の家族
信代は治の罪をすべて肩代わりし、刑務所に送られました。
治は、1人暮らしに戻ります。
亜紀は、かつての家を眺めていたシーンで出番が終わるため、その後が明示されていません。
祥太は、施設先に恵まれて健やかに成長し、学校のテストでいい点数をとったり、釣りを覚えたり、柴田家の中ではもっとも幸せを手に入れました。
しかし、りんは違いました。彼女の両親は相変わらず虐待とネグレクトを続けており、以前のようにベランダに1人にされてしまいます。
また誰かが迎えにきてくれるのを期待しているかのような姿のりんが映し出されて、物語は幕を閉じます。
万引き家族のメッセージと感想は?
貧困や家庭問題など、現在日本が抱える負の部分に切り込んだ作品である万引き家族。
『万引きのレクチャー』など、やりようによってはコメディチックに描ける描写も徹底的に廃した、メッセージ性の強い作品に仕上がっています。
また、『本物の親の元へ戻る』という、本来であれば最大のハッピーエンドを迎えるはずのゆりが、むしろこの作品でもっとも不幸な結末を迎えているラスト。
これはただのヒューマンドラマ映画として消費されるのではなく、視聴者に深く考えてほしいという監督の強い思いが伺えます。
例に出すのが不謹慎かもしれませんが、野田市で実の娘を連れ戻して虐待死させた事件がつい最近もあったように、虐待に苦しむ子供は現実に毎日のように行われているのです。
一見するとリアリティに欠けているようで、実際は現実でも充分起こりえるだろうギリギリのバランスを描いた作品。それが万引き家族という作品だと思います。